集合を使って「写像」を作る|順序対・直積・写像の構成

2020/09/15

今日の目標

集合を使って「写像」を構成する。

数学は集合からできてる?

mizuha
質問1
写像とは?
kureha
授業では
「集合 $A$ の各元に対して集合 $B$ の元を対応させる規則」
とかって教えられたけど
mizuha
じゃあその「規則」って数学的に何?
kureha
なんだろう……
mizuha
質問2
自然数とは?
kureha
$0, 1, 2, \cdots$
mizuha
その数学的な定義は?
kureha
えっと……
ペアノの公理を満たす集合の要素?
mizuha
ペアノの公理を満たす集合ってどうやって作るの?
kureha
えっと……
mizuha
……というような疑問は
mizuha
「集合だけを使って写像や自然数を構成する」
ってことを一度やっとくと
だいぶすっきりすると思います
kureha
ほお
mizuha
今日は写像を作るとこまでやるよ
kureha
はいよ

順序対を集合から構成する方法

mizuha
「写像」を定義するための準備として
集合の「直積」を定義したい
mizuha
そのためにまず「順序対」を定義しよう
kureha
$(1,2)$ みたいなあれか
定義

集合 $a, b$ に対し、集合 $(a, b)$ を $$(a, b) = \cbr{\cbr{a}, \cbr{a, b}}$$ で定める。この形の集合を順序対と呼ぶ。

kureha
意外とややこしいな……
mizuha
こう定義すると
$(a, b) = (c, d)$ ならば $a = c$ かつ $b = d$
っていう順序対が持つべき性質を導ける
kureha
ほう
mizuha
その前に補題を一つ
補題

集合 $a, b, c$ に対し $\cbr{a, b} = \cbr{a, c}$ ならば $b = c$ である。

証明

$b \in \cbr{a, b} = \cbr{a, c}$ より

$b = a$ または $b = c$

であり、また $c \in \cbr{a, c} = \cbr{a, b}$ より

$c = a$ または $c = b$

なので、「$b = a$ かつ $c = a$」のときもそうでないときも $b = c$ を得る。

mizuha
ということで
命題

集合 $a, b, c, d$ に対し、$(a, b) = (c, d)$ ならば

$a = c$ かつ $b = d$

が成り立つ。

証明

$\cbr{a} \in \cbr{\cbr{a}, \cbr{a, b}} = \cbr{\cbr{c}, \cbr{c, d}}$ なので

$\cbr{a} = \cbr{c}$ または $\cbr{a} = \cbr{c, d}$

であり、いずれの場合も $c \in \cbr{a}$ すなわち $a = c$ を得る。従って $$\cbr{\cbr{a}, \cbr{a, b}} = \cbr{\cbr{a}, \cbr{a, d}}$$ であり、補題を2度用いて $b = d$ を得る。

kureha
特に $(a,b) = (b,a)$ なら
$a = b$ かつ $b = a$ ってなるから……

集合 $a, b$ に対し $a \neq b$ ならば $(a, b) \neq (b, a)$ である。

kureha
$(a, b, c)$ のようなタプルは
$(a, (b, c))$ で定義すればいいのかな
mizuha
それでもいいけど
mizuha
「写像」や「自然数」の概念を定義した後で
$f: \cbr{0,1,2} \rightarrow \cbr{a,b,c}$
$f(0) = a, f(1) = b, f(2) = c$
っていう写像を $(a, b, c)$ とする
っていう手も
mizuha
こっちなら無限個の場合にも使えるし

直積(デカルト積)を構成する方法

mizuha
順序対が定義できたから
直積も定義できる
定義

集合 $A, B$ に対し、集合 $A \times B$ を $$A \times B = \iset{(a, b)}{\text{$a \in A$ and $b \in B$}}$$ で定め、$A$ と $B$ の直積と呼ぶ。

kureha
いつもの
mizuha
(まあ本当は この $A \times B$ がちゃんと「集合」であることを
 分出公理をつかってチェックすべきだけど…)

写像を集合から構成する方法

mizuha
集合 $A$ の各要素に対して
集合 $B$ の要素がただ一つ定まるような集合を
写像ということにしよう
定義

集合 $A, B$ の直積 $A \times B$ の部分集合 $f$ が、各 $a \in A$ に対して条件

$(a, b) \in f$ なる $b \in B$ がただ一つ存在する

を満たすとき、$f$ を $A$ から $B$ への写像と呼び $f: A \rightarrow B$ と書く。 また、この $b$ を $f(a)$ と書く。

写像 $f: A \rightarrow B$ において $A$ を始域(あるいは定義域)、$B$ を終域と呼ぶ。

kureha
グラフのような構造を持った集合によって
写像というものを作ったわけか

mizuha
あとは用語を準備
定義

写像 $f: A \rightarrow B$ と $A$ の部分集合 $A’$ に対し $$f[A’] = \iset{f(a)}{a \in A’}$$ とし、$A’$ の $f$ によると呼ぶ。

kureha
あれ $f(A’)$ って書かないの?
mizuha
あらゆるものを集合だとしてるときに
$A’$ の像まで $f(A’)$ って書いちゃうと
それが像なのか写像の行先なのかが分かりにくいから……
mizuha
(集合論以外の記事では像も丸括弧で書いてるかも……)
定義

写像 $f: A \rightarrow B$ が各 $a_1, a_2 \in A$ に対し、

$f(a_1) = f(a_2) \implies a_1 = a_2$

を満たすとき、$f$ は単射であるという。一方、 $$f[A] = B$$ を満たすとき、$f$ は全射であるという。

写像が単射でも全射でもあるとき、その写像は全単射であるという。

mizuha
ということで写像を導入できたので
mizuha
次回はペアノの公理を満たす集合を作ります

(おまけ)そもそも集合って?

kureha
集合って「数学的なものの集まり」って習ったんだけど
kureha
そこがまずもやもやしない?
mizuha
実は ZFC 公理系っていうのがあって
mizuha
「集合はこれらの論理式をすべて満たすものとしよう」
って感じできっちり公理化されてる
kureha
へー
mizuha
公理化して何がうれしいかっていうと
mizuha
まだ集合が公理化されてなかった時代に
「$\iset{x}{x \not\in x}$ を集合と認めると
矛盾が生じる! やべぇ!」
って問題になったことがあったんだけど
mizuha
集合の概念をきっちり公理化したことで
$\iset{x}{x \not\in x}$ を「集合」の枠組みから
排除できるようになったりしたりね
kureha
へー
mizuha
「ラッセルのパラドックス」参照
mizuha
ただ今回は ZFC には
あまり深入りしないでおこう
kureha
ややこしいの?
mizuha
初めて見ると「うおぅ……」ってなるよ多分
mizuha
ZFC に立ち向かうなら
一回素朴に集合から写像や自然数を作る様子を眺めて
感覚をつかんでからでもいいと思う
mizuha
深入りしたいなら
「ZFC 公理系」とか「公理的集合論」とかで
ググるべし
kureha
うい