sup と inf の演習問題 23 問(解答付き)|上限・下限
sup と inf の扱いに慣れる。演習問題で証明を書けるようになる。
$\inf$ とは下界の最大値
上界・下界の定義さえしっかり押さえれば
$\sup$ や $\inf$ はそんなに怖く無い
片っ端から解いていきます
上界・下界・上限・下限の定義
$\RR$ の部分集合 $A$ に対し、
実数 $x$ が $A$ の上界であるとは
任意の $a \in A$ に対して $x \geq a$
であることをいう。
実数 $x$ が $A$ の下界であるとは
任意の $a \in A$ に対して $x \leq a$
であることをいう。
$A$ の上界全体の集合を $U_A$ と書き、$A$ の下界全体の集合を $L_A$ と書く。
上界が存在するなら $\min U_A$ が存在して
下界が存在するなら $\max L_A$ が存在するのでした
(実数の連続性)
$\RR$ の空でない部分集合 $A$ に対し、
$A$ の上界が存在するとき、実数 $\sup A$ を
$\sup A = \min U_A$
で定め、$A$ の上限と呼ぶ。
$A$ の下界が存在するとき、実数 $\inf A$ を
$\inf A = \max L_A$
で定め、$A$ の下限と呼ぶ。
等式 $\sup A = t$ をどう示す?
$t$ が $A$ の上界で最も小さい実数だ
ということ……
(1) $t$ は $A$ の上界である
(2) $t$ より小さい実数は $A$ の上界でない
の両方を満たすということ
$a \in A$ を任意に取って $$a \leq t$$ を示せばいい
$x \lt t$ を任意に取って
$x$ が $A$ の上界でないこと
つまり $$\exists a \in A,\, x \lt a$$ を示せばいい
準備運動:「上界」に慣れる
$3$ は $A$ の上界?
Yes
$3$ は $A$ の上界?
No
$A = \iset{a \in \QQ}{a^2 \lt 2}$ とする。$2$ は $A$ の上界であることを示せ。
任意の $a \in A$ に対し $$a^2 \leq 2 \lt 4$$ なので $a \lt 2$ であり、特に $a \leq 2$ である。$A$ のどの要素も $2$ 以下になるので、$2$ は $A$ の上界である。
$A = \iset{a \in \QQ}{a^2 \lt 2}$ とする。$1$ は $A$ の上界でないことを示せ。
$\displaystyle a = \frac{4}{3}$ とすると $$1 \lt a$$ であり、更に $\displaystyle a^2 = \frac{16}{9} \lt 2$ なので $$a \in A$$ である。$A$ の要素に $1$ より大きなものが存在するので、$1$ は $A$ の上界ではない。
演習問題(等式編)
$A = [0,1)$ のとき $\sup {A} = 1$ であることを示せ。
任意の $a \in A$ に対し $a \lt 1$ なので $a \leq 1$ である。
$x \lt 0$ のときは $$x \lt 0 \in A$$ である。一方 $0 \leq x \lt 1$ のときは $$x \lt \frac{1+x}{2} \in A$$ である。よって $1$ より小さな実数は $A$ の上界ではない。
したがって $A$ の上界のうち最小の実数は $1$ である。
$\displaystyle A = \iset{\frac{1}{n}}{n \in \ZZ, n \gt 0}$ のとき $\inf A = 0$ であることを示せ。
$A$ のどの要素も正実数なので $0$ は $A$ の下界である。
$x \gt 0$ を任意に取る。 $\displaystyle x \gt \frac{1}{n}$ となる正整数 $n$ が存在すればよい。つまり $\displaystyle n \gt \frac{1}{x}$ を満たす正整数 $n$ が存在すればよいが、それは $$n = \left\lceil\dfrac{1}{x}\right\rceil + 1$$ とすればよい(あるいはアルキメデスの原理よりそのような $n$ が存在する)。
したがって $0$ は $A$ の下界のうち最大の実数である。
$\max A$ と呼ぶのでした
$\RR$ の部分集合 $A$ に最大値 $\max A$ が存在するとき $$\max A = \sup A$$ であることを示せ。
$\max$ の定義より自明。
$x \lt \max A$ とすると、$x$ より大きな $A$ の要素として $\max A$ が存在するので $x$ は $A$ の上界ではない。
したがって $\max A$ は $A$ の上界のうち最小の実数である。
$A = \iset{q \in \QQ}{q \lt 1}$ のとき $\sup A = 1$ であることを示せ。
任意の $q \in A$ に対し $q \lt 1$ なので $q \leq 1$ である。
$x \lt 1$ を任意に取る。有理数の稠密性より $$x \lt q \lt 1$$ となる $q \in \QQ$ が存在する。$x \lt q \in A$ なので $x$ は $A$ の上界ではない。
したがって $1$ は $A$ の上界のうち最小の実数である。
$\RR$ の空でない部分集合 $A, B$ に対し $\sup A, \sup B$ が存在するとき $$\sup (A \cup B) = \max \cbr{ \sup A, \sup B }$$ であることを示せ。
$a \in A \cup B$ を任意に取る。$a \in A$ のときは $$a \leq \sup A \leq \max \cbr{ \sup A, \sup B }$$ であり、一方 $a \in B$ のときも $$a \leq \sup B \leq \max \cbr{ \sup A, \sup B }$$ であるので、$\max \cbr{ \sup A, \sup B }$ は $A$ の上界である。
$x \lt \max \cbr{ \sup A, \sup B }$ を任意に取る。$x \lt \sup A$ または $x \lt \sup B$ であることに注意。
$x \lt \sup A$ のとき、$x$ は $A$ の上界ではないので、 $$x \lt c \in A$$ となる $c$ が存在する。 $x \lt \sup B$ のときも同様に、$$x \lt c \in B$$ となる $c$ が存在する。 よってどちらの場合も $$x \lt c \in A \cup B$$ となる $c$ が存在する。
したがって $\max \cbr{ \sup A, \sup B }$ は $A \cup B$ の上界のうち最小の実数である。
$\RR$ の空でない部分集合 $A, B$ に対し $\sup A, \sup B$ が存在するとする。このとき $$A + B = \iset{a + b}{a \in A, b \in B}$$ に対して $$\sup (A + B) = \sup A + \sup B$$ であることを示せ。
$A + B$ の要素 $a + b \ (a \in A, b \in B)$ を任意に取ると、 $a \in A$ より $$a \leq \sup A$$ であり、 $b \in B$ より $$b \leq \sup B$$ であるので $a + b \leq \sup A + \sup B$ である。
$x \lt \sup A + \sup B$ を任意に取り、$x$ が $A + B$ の上界でないことを示す。
$x \minus \sup A \lt \sup B$ なので $x \minus \sup A$ は $B$ の上界ではない。よって $$x \minus \sup A \lt b$$ となる $b \in B$ が存在する。 このとき $x \minus b \lt \sup A$ となるので $x \minus b$ は $A$ の上界ではない。よって $$x \minus b \lt a$$ となる $a \in A$ が存在する。 よって $$x \lt a + b \in A + B$$ となり、 $x$ は $A + B$ の上界ではない。
したがって $\sup A + \sup B$ は $A + B$ の上界のうち最小の実数である。
$\RR$ の空でない部分集合 $A, B$ に対し $\sup A, \sup B$ が存在するとする。 このとき、もし $A, B \subseteq [0,\infty)$ であれば、 $AB = \iset{ab}{a \in A, b \in B}$ に対して $$\sup (AB) = \sup A\sup B$$ であることを示せ。
$AB$ の要素 $ab \ (a \in A, b \in B)$ を任意に取ると、 $a \in A$ より $$a \leq \sup A$$ であり、 $b \in B$ より $$b \leq \sup B$$ である。$a$ も $b$ も非負なので $ab \leq \sup A \sup B$ である。
$x \lt \sup A \sup B$ を任意に取り、$x$ が $AB$ の上界でないことを示す。
$\sup A = 0$ のときは、$0$ が $A$ の上界となるので $A$ の任意の要素は $0$ 以下。すなわち $A = \cbr{0}$ であり、$AB = \cbr{0}$ となるので $$\sup(AB) = 0 = \sup A \sup B$$ である。$\sup B = 0$ のときも同様。
以下、$\sup A$ も $\sup B$ も正であるとする。 $\displaystyle\frac{x}{\sup A} \lt \sup B$ なので $\displaystyle\frac{x}{\sup A}$ は $B$ の上界ではない。よって $$\frac{x}{\sup A} \lt b$$ となる $b \in B$ が存在する。 このとき $\displaystyle\frac{x}{b} \lt \sup A$ となるので $\displaystyle\frac{x}{b}$ は $A$ の上界ではない。よって $$\frac{x}{b} \lt a$$ となる $a \in A$ が存在する。 よって $$x \lt ab \in AB$$ となり、 $x$ は $AB$ の上界ではない。
したがって $\sup A\sup B$ は $AB$ の上界のうち最小の実数である。
問題7の仮定「$A, B \subseteq [0,\infty)$」を弱めて「$A \subseteq \RR$ かつ $B \subseteq [0,\infty)$」としても $$\sup (AB) = \sup A\sup B$$ は成り立つか?
成り立つとは限らない。反例として $A = \cbr{-1}, B = [0,1]$ とすると $$\sup(AB) = \sup{[-1, 0]} = 0$$ である一方 $$\sup{A}\sup{B} = -1 \cdot 1 = -1$$ であり、一致しない。
$\RR$ の空でない部分集合 $A$ に対し $\sup A$ が存在するとする。$c \geq 0$ に対し $cA = \iset{ca}{a \in A}$ としたとき $$\sup (cA) = c \sup A$$ であることを示せ。
$cA$ の要素 $ca \ (a \in A)$ を任意に取る。$a \in A$ なので $$a \leq \sup A$$ であり、$c \geq 0$ より $ca \leq c\sup A$ である。
$x \lt c \sup A$ を任意に取り、$x$ が $cA$ の上界でないことを示す。
$x \lt 0 \in cA$ なので $x$ は $cA$ の上界ではない。
$\displaystyle\frac{x}{c} \lt \sup A$ なので $\displaystyle \frac{x}{c} \lt a$ となる $a \in A$ が存在する。したがって $$x \lt ca \in cA$$ となり、$x$ は $cA$ の上界ではない。
したがって $c \sup A$ は $cA$ の上界のうち最小の実数である。
$\RR$ の空でない部分集合 $A$ に対し $\inf A$ が存在するとする。$- A = \iset{- a}{a \in A}$ としたとき $$\sup (- A) = {- {\inf A}}$$ であることを示せ。
$- A$ の要素 $- a \ (a \in A)$ を任意に取る。$\inf A$ は $A$ の下界なので $$\inf A \leq a$$ である。よって $- a \leq – \inf A$ となるので $- \inf A$ は $- A$ の上界である。
$x \lt – \inf A$ とする。このとき $\inf A \lt -x$ なので $-x$ は $A$ の下界ではない。よって $$a \lt -x$$ なる $a \in A$ が存在する。したがって $x \lt -a \in -A$ であり、$x$ は $-A$ の上界ではない。
したがって $- A$ の上界のうち最小の実数は $- \inf A$ である。
不等式 $\sup A \leq t$ や $\sup A \geq t$ はどう示す?
(1) $t$ は $A$ の上界
(2) $t$ より小さな実数は $A$ の上界でない
の二つを示したけど
不等式のときは?
(1) $t$ は $A$ の上界
は $\sup A \leq t$ と同値
$A$ の上界の最小値である $\sup A$ は
もちろん $t$ 以下だし
そもそも $\sup A$ は $A$ の上界だから
$t$ も $A$ の上界になる
(2) $t$ より小さな実数は $A$ の上界でない
は $\sup A \geq t$ と同値
$A$ の上界の一つである $\sup A$ が
$t$ より小さくなることはないし
$t$ より小さな実数はどれも $\sup A$ より小さい、
つまり $A$ の上界の最小値よりも更に小さいんだから
$A$ の上界ではない
(1) $t$ が $A$ の上界
を示せばよくて
(2) $t$ より小さい実数は $A$ の上界でない
を示せばいいってことね
演習問題(不等式編)
$\RR$ の空でない部分集合 $A, B$ に対し $\sup B$ が存在するとする。このときもし $A \subseteq B$ であれば $$\sup A \leq \sup B$$ であることを示せ。
$a \in A$ を任意に取る。このとき $a \in B$ であり、$\sup B$ は $B$ の上界なので $$a \leq \sup B$$ である。よって $\sup B$ は $A$ の上界である。
よって $\sup A$ も存在し、$\sup A$ は $A$ の上界の最小値なので $\sup A \leq \sup B$ が成立する。
$B$ の上界が存在し、$A \subseteq B$ なので $A$ にも上界が存在して $\sup A$ が存在することに注意。
$x \lt \sup A$ とする。このとき $x$ は $A$ の上界ではないので $$x \lt a$$ なる $a \in A$ が存在する。$A \subseteq B$ より $a \in B$ であり、$B$ の要素で $x$ より大きなものが存在するので、$x$ は $B$ の上界ではない。
$\sup B$ は $B$ の上界なので $\sup B \geq \sup A$ でなくてはならない。
$\RR$ の部分集合 $A, B$ が $A \cap B \neq \varnothing$ を満たし、$\sup A, \sup B$ が存在するとする。このとき $$\sup (A \cap B) \leq \min\cbr{\sup A, \sup B}$$ であることを示せ。
$a \in A \cap B$ を任意に取る。このとき $a \leq \sup A$ と $a \leq \sup B$ が成り立つので $$a \leq \min \cbr{\sup A, \sup B}$$ を得る。よって $\min \cbr{\sup A, \sup B}$ は $A$ の上界である。
よって $\sup (A \cap B)$ が存在し、$\sup (A \cap B)$ は $A \cap B$ の上界の最小値なので $$\sup (A \cap B) \leq \min\cbr{\sup A, \sup B}$$ が成立する。
演習問題(その他)
空でない集合 $X$ と写像 $f: X \rightarrow \RR$ に対し、$\sup \iset{f(x)}{x \in X}$ を単に $\displaystyle\sup_{x \in X} f(x)$ と書く。
空でない集合 $X$ と写像 $f, g: X \rightarrow \RR$ に対して、$\displaystyle\sup_{x \in X} g(x)$ が存在し、 $$f(x) \leq g(x)$$ が任意の $x \in X$ について成り立つとき $$\sup_{x \in X} f(x) \leq \sup_{x \in X} g(x)$$ であることを示せ。
$x \in X$ を任意に取ると $$\displaystyle f(x) \leq g(x) \leq \sup_{x \in X} g(x)$$ であるので $\displaystyle\sup_{x \in X} g(x)$ は $\iset{f(x)}{x \in X}$ の上界である。 よって $\displaystyle\sup_{x \in X} f(x)$ が存在し、$\displaystyle\sup_{x \in X} f(x)$ は $\iset{f(x)}{x \in X}$ の上界の最小値なので $$\sup_{x \in X} f(x) \leq \sup_{x \in X} g(x)$$ が成り立つ。
空でない集合 $X$ と写像 $f, g: X \rightarrow \RR$ に対して、$\displaystyle\sup_{x \in X} f(x)$ と $\displaystyle\sup_{x \in X} g(x)$ が存在するとき $$\sup_{x \in X} (f(x) + g(x)) \leq \sup_{x \in X} f(x) + \sup_{x \in X} g(x)$$ であることを示せ。
$x \in X$ を任意に取る。このとき
$\displaystyle f(x) \leq \sup_{x \in X} f(x)\ $ かつ $\ \displaystyle g(x) \leq \sup_{x \in X} g(x)$
であるので $$f(x) + g(x) \leq \sup_{x \in X} f(x) + \sup_{x \in X} g(x)$$ である。したがってこの右辺は $\iset{f(x) + g(x)}{x \in X}$ の上界なので(あるいはこの両辺の上限を取ることによって) $$\sup_{x \in X}(f(x) + g(x)) \leq \sup_{x \in X} f(x) + \sup_{x \in X} g(x)$$ を得る。
問題14の不等号を等号に置き換えた等式
$\displaystyle\sup_{x \in X} (f(x) + g(x))$${}={}$$\displaystyle\sup_{x \in X} f(x) + \sup_{x \in X} g(x)$
は一般に成り立つか?
一般には成り立たない。反例として $X = [-1, 1], f(x) = x, g(x) = -x$ とすると $$\sup_{x \in X} (f(x) + g(x)) = \sup_{x \in [-1,1]} 0 = 0$$ である一方、 \begin{align} \sup_{x \in X} f(x) + \sup_{x \in X} g(x) &= \sup_{x \in [-1,1]} x + \sup_{x \in [-1,1]} (-x) \\&= 1 + 1 \\&= 2 \end{align} であり、一致しない。
$X$ を空でない集合とし、関数 $f: X \rightarrow \RR$ で有界なもの、すなわち $$\sup_{x \in X} \abs{f(x)} \lt \infty$$ を満たすもの全体を $\mathcal{B}(X, \RR)$ と書く。また $\dnorm{\cdot}: \mathcal{B}(X, \RR) \rightarrow [0,\infty)$ を $$\dnorm{f} = \sup_{x \in X} \abs{f(x)}$$ で定める。
$f \in \mathcal{B}(X, \RR)$ に対し $$\dnorm{f} = 0 \iff f = 0$$ であることを示せ。
$\dnorm{f} = \sup \cbr{0} = 0$ より従う。
$\displaystyle\sup_{x \in X} \abs{f(x)} = 0$ なので各 $x \in X$ に対し $\abs{f(x)} \leq 0$ であり、したがって $\abs{f(x)} = 0$ なので
各 $x \in X$ に対し ${f(x)} = 0$
すなわち $f = 0$ である。
$f \in \mathcal{B}(X, \RR)$ と $c \in \RR$ に対し $$\dnorm{cf} = |c|\dnorm{f}$$ であることを示せ。
$\abs{c} \geq 0$ と問題9より \begin{align} \dnorm{cf} &= \sup_{x \in X}{\abs{cf(x)}} \\&= \sup_{x \in X}\pbr{\abs{c}\abs{f(x)}} \\&= |c| \sup_{x \in X}{\abs{f(x)}} \\&= |c| \dnorm{f} \end{align}
$f, g \in \mathcal{B}(X, \RR)$ に対し $$\dnorm{f + g} \leq \dnorm{f} + \dnorm{g}$$ であることを示せ。
$x \in X$ を任意に取る。このとき $$\abs{f(x) + g(x)} \leq \abs{f(x)} + \abs{g(x)}$$ なので、両辺の上限を取って(問題13) $$\sup_{x \in X}\abs{f(x) + g(x)} \leq \sup_{x \in X}(\abs{f(x)} + \abs{g(x)})$$ となり、この右辺は更に $$\sup_{x \in X}(\abs{f(x)} + \abs{g(x)}) \leq \sup_{x \in X}\abs{f(x)} + \sup_{x \in X}\abs{g(x)}$$ と抑えられる(問題14)ので $\dnorm{f + g} \leq \dnorm{f} + \dnorm{g}$ を得る。
$\ZZ$ の部分集合 $A$ に $\sup A$ が存在するならば $\sup A \in \ZZ$ か?
$\sup A \in \ZZ$ であることを示す。
$\sup A \not\in \ZZ$ と仮定する。このとき $t = \floor{\sup A}$ とすると $t \lt \sup A$ となり、$t$ は $A$ の上界ではないので $$t \lt u$$ なる $u \in A$ が存在する。$t$ は $\sup A$ を超えない最大の整数であり、$u$ は $t$ より大きな整数なので、$u$ は $\sup A$ を超える。つまり $$\sup A \lt u \in A$$ となり、$\sup A$ が $A$ の上界でないことになるが、これは $\sup$ の定義に矛盾する。
$\QQ$ の部分集合 $A$ に $\sup A$ が存在するならば $\sup A \in \QQ$ か?
そうとは限らない。$A = \iset{q \in \QQ}{q^2 \lt 2}$ として $\sup A = \sqrt{2}$ を示す。
$q \in A$ を任意に取ると $q^2 \lt 2$ なので $$-\sqrt{2} \lt q \lt \sqrt{2}$$ であり特に $q \leq \sqrt{2}$ である。
$x \lt \sqrt{2}$ を任意に取る。
$x \lt 0 \in A$ なので $x$ は $A$ の上限ではない。
有理数の稠密性より $x \lt q \lt \sqrt{2}$ なる $q \in \QQ$ が存在し、$-\sqrt{2} \lt q \lt \sqrt{2}$ なので $$q^2 \lt 2$$ すなわち $q \in A$ である。$x \lt q \in A$ なので $x$ は $A$ の上限ではない。
よって $\sqrt{2}$ は $A$ の上界で最も小さい実数である。
空でない集合 $X, Y$ に対し $f: X \times Y \rightarrow \RR$ は上に有界、すなわちある $M \in \RR$ が存在して各 $(x, y) \in X \times Y$ に対し $f(x, y) \leq M$ であるとする。このとき $$\sup_{x \in X}\sup_{y\in Y} f(x,y) = \sup_{y\in Y} \sup_{x \in X} f(x,y) = \sup_{(x, y) \in X \times Y} f(x, y)$$ であることを示せ。
実数 $a, b, c$ に対し $a \leq b$ かつ $b \leq c$ かつ $c \leq a$ ならば $a = b = c$ となることに注意。
$x \in X, y \in Y$ を任意に取る。$f(x, y) = f(x, y)$ であるが、この右辺を $x \in X$ で上限を取って $$f(x,y) \leq \sup_{x \in X} f(x,y)$$ であり、更にこの右辺を $y \in Y$ で上限を取って $$f(x,y) \leq \sup_{y \in Y}\sup_{x \in X} f(x,y)$$ である。この右辺は定数なので、$y \in Y$ について上限を取る(参考:問題13)と $$\sup_{y \in Y}f(x,y) \leq \sup_{y \in Y}\sup_{x \in X} f(x,y)$$ であり、更に $x \in X$ について上限を取ると $$\sup_{x \in X}\sup_{y \in Y}f(x,y) \leq \sup_{y \in Y}\sup_{x \in X} f(x,y)$$ である。
$x \in X, y \in Y$ を任意に取る。$f(x, y) = f(x, y)$ であるが、この右辺を $(x, y) \in X \times Y$ で上限を取って $$f(x,y) \leq \sup_{(x, y) \in X \times Y} f(x,y)$$ である。この右辺は定数なので、$x \in X$ について上限を取ると $$\sup_{x \in X}f(x,y) \leq \sup_{(x, y) \in X \times Y} f(x,y)$$ であり、更に $y \in Y$ について上限を取ると $$\sup_{y \in Y}\sup_{x \in X}f(x,y) \leq \sup_{(x, y) \in X \times Y} f(x,y)$$ である。
$x \in X, y \in Y$ を任意に取る。$f(x, y) = f(x, y)$ であるが、この右辺を $y \in Y$ で上限を取って $$f(x,y) \leq \sup_{y \in Y} f(x,y)$$ であり、更にこの右辺を $x \in X$ で上限を取って $$f(x,y) \leq \sup_{x \in X}\sup_{y \in Y} f(x,y)$$ である。この右辺は定数なので、$(x, y) \in X \times Y$ について上限を取ると $$\sup_{(x, y) \in X \times Y}f(x,y) \leq \sup_{x \in X}\sup_{y \in Y} f(x,y)$$ である。
空でない集合 $X, Y$ に対し $f: X \times Y \rightarrow \RR$ は有界、すなわちある $N, M \in \RR$ が存在して各 $(x, y) \in X \times Y$ に対し $N \leq f(x, y) \leq M$ であるとする。このとき $$\sup_{x \in X}\inf_{y \in Y} f(x,y) \leq \inf_{y \in Y}\sup_{x \in X} f(x,y)$$ であることを示せ。
$x \in X, y \in Y$ を任意に取る。$f(x, y) = f(x, y)$ であるが、この右辺を $x \in X$ で上限を取って $$f(x,y) \leq \sup_{x \in X} f(x,y)$$ であり、更にこの左辺を $y \in Y$ で下限を取って $$\inf_{y \in Y} f(x,y) \leq \sup_{x \in X} f(x,y)$$ である。この右辺は $x$ に依らないので、左辺を $x \in X$ で上限を取って $$\sup_{x \in X}\inf_{y \in Y} f(x,y) \leq \sup_{x \in X} f(x,y)$$ であり、この左辺は $y$ に依らないので、右辺を $y \in Y$ で下限を取って $$\sup_{x \in X}\inf_{y \in Y} f(x,y) \leq \inf_{y \in Y}\sup_{x \in X} f(x,y)$$ を得る。
問題22の不等号を等号に置き換えた等式 $$\sup_{x \in X}\inf_{y \in Y} f(x,y) = \inf_{y \in Y}\sup_{x \in X} f(x,y)$$ は一般に成り立つか?
一般には成り立たない。反例として $X = Y = \cbr{0,1}$ および \begin{align} f(0,1) &= 1 & f(1,1) &= 0 \\ f(0,0) &= 0 & f(1,0) &= 1 \end{align} とすると $$\inf_{y \in Y} f(0,y) = 0$$ $$\inf_{y \in Y} f(1,y) = 0$$ なので $\displaystyle\sup_{x \in X}\inf_{y \in Y} f(x,y) = 0$ であり、一方 $$\sup_{x \in X} f(x,0) = 1$$ $$\sup_{x \in X} f(x,1) = 1$$ なので $\displaystyle\inf_{y \in Y}\sup_{x \in X} f(x,y) = 1$ であり、一致しない。