ε-N論法の演習問題 16 問(解答付き)|数列の極限

2020/06/24

今日の目標

ε-N 論法に慣れる。演習問題で証明を書けるようになる。

この記事で使う記号や用語
  • $\NN$ を非負整数全体の集合とする。

定義の確認

定義(実数列の収束)

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ が実数 $\alpha$ に収束するとは、

任意の正実数 $\varepsilon$ に対し、ある自然数 $N$ が存在して、 $\qquad$$\qquad$
$\qquad$$\qquad$ $n \geq N$ なる各自然数 $n$ に対し、$\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$

が成り立つことを言い、$a_n \rightarrow \alpha \ (n \rightarrow \infty)$ と書く。

数列の収束のイメージ

kureha
$\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$ ってどういう意味?
mizuha
$\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$ を書き換えると
$\alpha \minus \varepsilon \lt a_n \lt \alpha + \varepsilon$
mizuha
つまり $\alpha$ から距離 $\varepsilon$ の内側に
$a_n$ が入ってるってこと
kureha
定義がややこしくて うまくイメージできない……
mizuha
図を書いた方がいいね

mizuha
この図の青い横向きの帯を
どんなに細く取ったとしても
$n$ がある自然数以上になったら
$a_n$ が常にその青い帯に入り続けるってこと
kureha
$\varepsilon$ の値によって $N$ の値が変わってもいいんだよね
mizuha
そうそう
青い帯を更に細くしても
緑の領域を十分右にもっていけば
「緑の中の赤点は必ず青い帯に入る」状態に持っていける
kureha
「どんなに帯を細くしても ある時点からずっとその帯に入る」
ってことか
mizuha
ε-N 論法ってなにかと恐れられがちだけど
概念としてはそれだけなんだよね
mizuha
あとはそれを使いこなせるようになるまで
いっぱい練習しよう

【LEVEL 1】具体的な数列の極限を ε-N 論法で示す

mizuha
$\dfrac{n}{n+2} \rightarrow 1 \ (n \rightarrow \infty)$ を ε-N 論法で示してみよう
mizuha
つまり
$\forall \varepsilon \gt 0, \exists N \in \NN, \forall n \geq N, \abs{\dfrac{n}{n+2} \minus 1} \lt \varepsilon$
を示す
kureha
量化子3つもある式を示すのつらい
mizuha
じゃあ
量化子 0 個の式からはじめて
ちょっとずつ慣れていこう
基礎練習(量化子 0 個)
(1)
$\abs{\dfrac{1}{1 + 2} \minus 1} \geq \dfrac{1}{2}$ を示せ。
(2)
$\abs{\dfrac{2}{2 + 2} \minus 1} \geq \dfrac{1}{2}$ を示せ。
(3)
$\abs{\dfrac{3}{3 + 2} \minus 1} \lt \dfrac{1}{2}$ を示せ。
(4)
$\abs{\dfrac{4}{4 + 2} \minus 1} \lt \dfrac{1}{2}$ を示せ。
解答例
(1)
$\abs{\dfrac{1}{1 + 2} \minus 1} = \abs{\dfrac{1}{3} \minus 1} = \dfrac{2}{3} \gt \dfrac{1}{2}$
(2)
$\abs{\dfrac{2}{2 + 2} \minus 1} = \abs{\dfrac{1}{2} \minus 1} = \dfrac{1}{2}$
(3)
$\abs{\dfrac{3}{3 + 2} \minus 1} = \abs{\dfrac{3}{5} \minus 1} = \dfrac{2}{5} \lt \dfrac{1}{2}$
(4)
$\abs{\dfrac{4}{4 + 2} \minus 1} = \abs{\dfrac{2}{3} \minus 1} = \dfrac{1}{3} \lt \dfrac{1}{2}$
kureha
これは簡単
mizuha
じゃあ少し一般化しよう
基礎練習(量化子 1 個)

$n \geq 3$ なる各自然数 $n$ に対し $\abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} \lt \dfrac{1}{2}$ であることを示せ。

解答例

$n \geq 3$ を任意に取る。このとき \begin{align} \abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} = \dfrac{2}{n + 2} \leq \dfrac{2}{5} \lt \dfrac{1}{2} \end{align}

kureha
$3$ 以上のどの $n$ に対しても
$\dfrac{n}{n + 2}$ と $1$ の差は $\dfrac{1}{2}$ より小
mizuha
じゃあ その $3$ っていう数字はどうやって見つけようか
mizuha
↓ の問題は前問から自明だけど
前問を知らない体で解いてみよう
基礎練習(量化子 2 個)

ある自然数 $N$ が存在して、$n \geq N$ なる各自然数 $n$ に対し $$\abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} \lt \frac{1}{2}$$ であることを示せ。

解答例

各自然数 $n$ に対し、 \begin{align} \abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} \lt \dfrac{1}{2} &\iff \dfrac{2}{n + 2} \lt \dfrac{1}{2} \\&\iff 4 \lt n + 2 \\&\iff n \gt 2 \end{align} となる。よって $n \geq 3$ ならば $\abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} \lt \dfrac{1}{2}$ が成り立つ。

kureha
まず不等式を変形して
不等式成立のためにどんな $N$ を取ればいいかを
探るって感じか
mizuha
もう一問
右辺の $\dfrac{1}{2}$ をもっと小さくしても成り立つかな?
基礎練習(量化子 2 個)

ある自然数 $N$ が存在して、$n \geq N$ なる各自然数 $n$ に対し $$\abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} \lt \frac{1}{1000}$$ であることを示せ。

解答例

各自然数 $n$ に対し、 \begin{align} \abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} \lt \dfrac{1}{1000} &\iff \dfrac{2}{n + 2} \lt \dfrac{1}{1000} \\&\iff 2000 \lt n + 2 \\&\iff n \gt 1998 \end{align} となる。よって $n \geq 1999$ ならば $\abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} \lt \dfrac{1}{1000}$ が成り立つ。

kureha
$\dfrac{1}{1000}$ より小さくても成り立ちそう
mizuha
ということで一般化しよう
基礎練習(量化子 3 個)

任意の $\varepsilon \gt 0$ に対しある自然数 $N \in \NN$ が存在して、$n \geq N$ なる各自然数 $n$ に対し $$\abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} \lt \varepsilon$$ であることを示せ。すなわち ${\dfrac{n}{n + 2}} \rightarrow 1 \ (n \rightarrow \infty)$ を示せ。

解答例

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取り固定する。 各自然数 $n$ に対し、 \begin{align} \abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} \lt \varepsilon &\iff \dfrac{2}{n + 2} \lt \varepsilon \\&\iff \dfrac{2}{\varepsilon} \lt n + 2 \\&\iff n \gt \dfrac{2}{\varepsilon} \minus 2 \end{align} となる。ここで $\dfrac{2}{\varepsilon} \minus 2$ より大きな自然数を一つ取って $N$ とする(※)。このとき $n \geq N$ ならば $n \gt \dfrac{2}{\varepsilon} \minus 2$ であり、上記の同値変形より $\abs{\dfrac{n}{n + 2} \minus 1} \lt \varepsilon$ となる。

mizuha
(※)
この $N$ を明示したいときは $$N = \max \cbr{0, \left\lceil{\dfrac{2}{\varepsilon} \minus 2}\right\rceil}$$ ってすればいいね
kureha
なんで $0$ と $\max$ 取ってんの?
mizuha
$N = \left\lceil{\dfrac{2}{\varepsilon} \minus 2}\right\rceil$ としちゃうと
例えば $\varepsilon = 2$ のとき
$N = \minus 1$ で自然数じゃなくなっちゃうから

kureha
数列がある極限に収束することを示すには
(1) $\varepsilon \gt 0$ を固定する
(2) 一般の自然数 $n$ を用いて不等式を変形する
(3) $n$ がどんな値以上ならその不等式が成り立つのかを探る
っていう考え方で基本解けばいいのかな
mizuha
うん でも慣れてきたら
$\varepsilon \gt 0$ を固定したあと
先の展開を予測してさっさと $N$ を明示して
$n \geq N$ として不等式を導出
っていう解答を書いてもいいかもね
問題1

$\dfrac{1}{n} \rightarrow 0 \ (n \rightarrow \infty)$ を示せ。

解答例

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。このとき各自然数 $n$ に対し \begin{align} \abs{\dfrac{1}{n} \minus 0} \lt \varepsilon &\iff \dfrac{1}{n} \lt \varepsilon \\&\iff n \gt \dfrac{1}{\varepsilon} \end{align} となる。ここで $\dfrac{1}{\varepsilon}$ より大きな自然数を一つ取り $N$ とすると、$n \geq N$ ならば $n \gt \dfrac{1}{\varepsilon}$ であり $\abs{\dfrac{1}{n} \minus 0} \lt \varepsilon$ が成り立つ。

問題2

$\dfrac{n^2 + 1}{n^3} \rightarrow 0 \ (n \rightarrow \infty)$ を示せ。

解答例

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。このとき各自然数 $n$ に対し \begin{align} \abs{\dfrac{n^2 + 1}{n^3} \minus 0} \lt \varepsilon &\iff \dfrac{n^2 + 1}{n^3} \lt \varepsilon \\&\iff n^2 + 1 \lt \varepsilon n^3 \\&\iff n^2(\varepsilon n \minus 1) \gt 1 \end{align} となる。$n \geq 1$ かつ $\varepsilon n\minus 1 \geq 2$ ならばこの不等式が成り立つことに注意。つまり

$n \geq 1$ かつ $n \geq \dfrac{3}{\varepsilon}$

ならばこの不等式が成り立つ。そこで $1$ よりも $\dfrac{3}{\varepsilon}$ よりも大きな自然数を一つ取って $N$ とすると、 各 $n \geq N$ に対し $\abs{\dfrac{n^2 + 1}{n^3} \minus 0} \lt \varepsilon$ が成り立つ。

mizuha
慣れてる人から見たら
$N$ の取り方が雑だなー って思うかもだけど
慣れないうちはこれくらい雑に大きく取ってもいいと思う
mizuha
次の問題はちょっとテクニカルで難しいかも
問題3

$-1 \lt r \lt 1$ のとき $r^n \rightarrow 0 \ (n \rightarrow \infty)$ を示せ。

解答例

$r = 0$ のときは自明。$r \neq 0$ とする。つまり $0 \lt \abs{r} \lt 1$ である。

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。$\abs{r} = \dfrac{1}{R}$ と書くと $R \gt 1$ なので $R = 1 + d$ ($d \gt 0$)と書ける。 このとき \begin{align} \abs{r^n} \lt \varepsilon &\iff \dfrac{1}{(1+d)^n} \lt \varepsilon \end{align} である。$n \geq 1$ のとき $\dfrac{1}{(1+d)^n} \leq \dfrac{1}{nd}$ であることに注意。よって $\dfrac{1}{Nd} \lt \varepsilon$ となる正整数 $N$ を一つ取ると

各 $n \geq N$ に対し $\dfrac{1}{(1+d)^n} \leq \dfrac{1}{nd} \leq \dfrac{1}{Nd} \lt \varepsilon$

すなわち $\abs{r^n} \lt \varepsilon$ である。

【LEVEL 2】数列の収束を「使う」

mizuha
まず絶対値の三角不等式を復習しよう
命題

実数 $x, y, z$ に対し

(1)
$\abs{x + y} \leq \abs{x} + \abs{y}$
(2)
$\abs{x + y} \geq \abs{x} \minus \abs{y}$
(2′)
$\abs{x + y} \geq \abs{y} \minus \abs{x}$
(2")
$\abs{x + y} \geq \abs{\abs{x} \minus \abs{y}}$
が成り立つ。

証明

(1)

$x \leq \abs{x}$ および $-x \leq \abs{x}$ に注意。

$x + y \geq 0$ のときは $\abs{x + y} = x + y \leq \abs{x} + \abs{y}$ である。

$x + y \lt 0$ のときは $\abs{x + y} = \minus x \minus y \leq \abs{x} + \abs{y}$ である。

(2)

$\abs{x} = \abs{x + y \minus y} \leq \abs{x + y} + \abs{-y} = \abs{x + y} + \abs{y}$ から従う。

(2′)

$\abs{x + y} = \abs{y + x} \geq \abs{y} \minus \abs{x}$

(2")

(2) と (2′) から従う。

mizuha
もっと言うと \begin{align} \abs{a+b} \leq \abs{a} + \abs{b} && \abs{a \minus b} \leq \abs{a} + \abs{b} \\ \abs{ \minus a+b} \leq \abs{a} + \abs{b} && \abs{ \minus a \minus b} \leq \abs{a} + \abs{b} \end{align} \begin{align} \abs{a+b} \geq \abs{a} \minus \abs{b} && \abs{a \minus b} \geq \abs{a} \minus \abs{b} \\ \abs{ \minus a+b} \geq \abs{a} \minus \abs{b} && \abs{ \minus a \minus b} \geq \abs{a} \minus \abs{b} \end{align} \begin{align} \abs{a+b} \geq \abs{b} \minus \abs{a} && \abs{a \minus b} \geq \abs{b} \minus \abs{a} \\ \abs{ \minus a+b} \geq \abs{b} \minus \abs{a} && \abs{ \minus a \minus b} \geq \abs{b} \minus \abs{a} \end{align} \begin{align} \abs{a+b} \geq \abs{\abs{a} \minus \abs{b}} && \abs{a \minus b} \geq \abs{\abs{a} \minus \abs{b} } \\ \abs{ \minus a+b} \geq \abs{\abs{a} \minus \abs{b}} && \abs{ \minus a \minus b} \geq \abs{\abs{a} \minus \abs{b}} \end{align} が成り立つ
mizuha
高校時代のノリで公式覚えようとするんじゃなくて
こんなのあったなっていうのを頭の片隅に置いといて
いっぱい問題解きながら慣れていこう
kureha
$\abs{x} \leq \abs{y \minus x} + \abs{y}$ とか
$\abs{x} \geq \abs{x \minus y} \minus \abs{2x \minus y}$ とか
$\abs{x \minus y} \leq \abs{x \minus z} + \abs{y \minus z}$ とか
$\abs{x \minus y} \geq \abs{\abs{x \minus 2y} \minus \abs{y}}$ とか
いろいろできるね

mizuha
極限が存在すれば一意であることを示そう
mizuha
つまり $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ が $\alpha$ にも $\beta$ にも収束するなら
$\alpha = \beta$ ってことか
mizuha
$a_n \rightarrow \alpha \ (n \rightarrow \infty)$ を使えるときは
好き勝手に正実数 $r$ を選んで
「各 $n\geq N$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt r$ 」
が成り立つような自然数 $N$ を取ってこれる
問題4

実数列が収束すれば一意であることを示せ。

解答例

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ と実数 $\alpha, \beta$ に対し

$a_n \rightarrow \alpha \ (n \rightarrow \infty)$ $\quad$ かつ $\quad$ $a_n \rightarrow \beta \ (n \rightarrow \infty)$

と仮定する。$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。このとき、ある自然数 $N_1$ が存在して

各 $n \geq N_1$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$

であり、ある自然数 $N_2$ が存在して

各 $n \geq N_1$ に対し $\abs{a_n \minus \beta} \lt \varepsilon$

である。よって $N = \max\cbr{N_1, N_2}$ とすると

$\abs{\alpha \minus \beta} \leq \abs{a_N \minus \alpha} + \abs{a_N \minus \beta} \lt 2\varepsilon$

である。「任意の $\varepsilon \gt 0$ に対し $\abs{\alpha \minus \beta} \lt 2\varepsilon$」が得られたので $$\abs{\alpha \minus \beta} \leq \inf_{\varepsilon \gt 0} (2 \varepsilon)$$ であり、右辺は $0$ なので $\abs{\alpha \minus \beta} = 0$ すなわち $\alpha = \beta$ である。

mizuha
極限の一意性が得られたから次のように表記しても問題ないね
記法

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ が実数 $\alpha$ に収束するとき $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \alpha$ と書く。

mizuha
次は $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \alpha$ かつ $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} b_n = \beta$ なら
$\ds\lim_{n \rightarrow \infty} (a_n + b_n) = \alpha + \beta$ になることを示そう
問題5

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}, \cbr{b_n}_{n \in \NN}$ と実数 $\alpha, \beta$ に対し、 $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ かつ $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}b_n = \beta$ ならば $$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}(a_n + b_n) = \alpha + \beta$$ が成り立つことを示せ。

解答例

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。各自然数 $n$ に対し \begin{align} \abs{(a_n + b_n) \minus (\alpha + \beta)} &= \abs{(a_n \minus \alpha) + (b_n \minus \beta)} \\&\leq \abs{a_n \minus \alpha} + \abs{b_n \minus \beta} \end{align} であることに注意。 $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ と $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}b_n = \beta$ より、ある自然数 $N_1, N_2$ が存在して、

各 $n \geq N_1$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \dfrac{\varepsilon}{2}$

各 $n \geq N_2$ に対し $\abs{b_n \minus \beta} \lt \dfrac{\varepsilon}{2}$

となる。よって $N = \max\cbr{N_1, N_2}$ とすると、各 $n \geq N$ に対して $$\abs{(a_n + b_n) \minus (\alpha + \beta)} \leq \dfrac{\varepsilon}{2}+\dfrac{\varepsilon}{2} \lt \varepsilon$$ となる。

mizuha
更に $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \alpha$ かつ $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} b_n = \beta$ なら
$\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n b_n = \alpha \beta$ になることを示そう
mizuha
前問と同じく $\abs{a_n \minus \alpha}$ や $\abs{b_n \minus \beta}$ を引っ張り出そう
問題6

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}, \cbr{b_n}_{n \in \NN}$ と実数 $\alpha, \beta$ に対し、 $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ かつ $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}b_n = \beta$ ならば $$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n b_n = \alpha \beta$$ が成り立つことを示せ。

解答例1(素朴な方法)

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。各自然数 $n$ に対し \begin{align} \abs{a_n b_n \minus \alpha \beta} &= \abs{(a_n \minus \alpha)b_n + \alpha b_n \minus \alpha \beta} \\&= \abs{(a_n \minus \alpha)b_n + \alpha(b_n \minus \beta)} \\&\leq \abs{a_n \minus \alpha}\abs{b_n} + \abs{\alpha}\abs{b_n \minus \beta} \\&= \abs{a_n \minus \alpha}\abs{b_n \minus \beta + \beta} + \abs{\alpha}\abs{b_n \minus \beta} \\&\leq \abs{a_n \minus \alpha}\abs{b_n \minus \beta}\abs{\beta} + \abs{\alpha}\abs{b_n \minus \beta} \end{align} であることに注意。$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ と $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}b_n = \beta$ より、ある自然数 $N_1, N_2, N_3$ が存在して、

$\qquad$$\qquad$ 各 $n \geq N_1$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt 1$

$\qquad$$\qquad$ 各 $n \geq N_2$ に対し $\abs{b_n \minus \beta} \lt \dfrac{\varepsilon}{2}\dfrac{1}{\abs{\beta} + 1}$ (※)

$\qquad$$\qquad$ 各 $n \geq N_3$ に対し $\abs{b_n \minus \beta} \lt \dfrac{\varepsilon}{2}\dfrac{1}{\abs{\alpha} + 1}$

となる。よって $n \geq \max\cbr{N_1, N_2, N_3}$ ならば \begin{align} \abs{a_n b_n \minus \alpha \beta} &\lt 1 \cdot \dfrac{\varepsilon}{2}\dfrac{1}{\abs{\beta} + 1}\cdot \abs{\beta} + \abs{\alpha} \cdot \dfrac{\varepsilon}{2}\dfrac{1}{\abs{\alpha} + 1} \\&\lt \dfrac{\varepsilon}{2} + \dfrac{\varepsilon}{2} \\&= \varepsilon \end{align} が成り立つ。

mizuha
(※)
ほんとは $\abs{b_n \minus \beta} \lt \dfrac{\varepsilon}{2}\dfrac{1}{\abs{\beta}}$ ってしたいところだけど
$\abs{\beta} = 0$ の可能性があったから
分母に +1 して回避
mizuha
ちなみにこの解答例はまだまだ粗削り
いろんな技術を学ぶともっとすっきり書けるよ
mizuha
例えば……
問題7

収束する実数列は有界であることを示せ。

※ここで実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ が有界であるとは、各 $n \in \NN$ に対し $\abs{a_n} \leq M$ となるような($n$ に依らない)定数 $M$ が存在することである。

解答例

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ が実数 $\alpha$ に収束するとする。このときある自然数 $N$ が存在して

各 $n \geq N$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt 1$

となる。よって各 $n \geq N$ に対し \begin{align} \abs{a_n} &\leq \abs{a_n \minus \alpha} + \abs{\alpha} \lt 1 + \abs{\alpha} \end{align} となる。よって全ての自然数 $n$ に対し $$\abs{a_n} \leq \max\cbr{\abs{a_0}, \ldots, \abs{a_{N \minus 1}}, 1 + \abs{\alpha}} $$ となり、右辺は $n$ に依らない定数。

mizuha
これを使うと問題6の解答はこんな風にもかける
問題6(再掲)

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}, \cbr{b_n}_{n \in \NN}$ と実数 $\alpha, \beta$ に対し、 $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ かつ $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}b_n = \beta$ ならば $$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n b_n = \alpha \beta$$ が成り立つことを示せ。

解答例2(収束列の有界性を使う)

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。各自然数 $n$ に対し \begin{align} \abs{a_n b_n \minus \alpha \beta} &= \abs{(a_n \minus \alpha)b_n + \alpha b_n \minus \alpha \beta} \\&= \abs{(a_n \minus \alpha)b_n + \alpha(b_n \minus \beta)} \\&\leq \abs{a_n \minus \alpha}\abs{b_n} + \abs{\alpha}\abs{b_n \minus \beta} \end{align} であることに注意。 収束列は有界なので、$\abs{b_n} \leq M$ なる定数 $M$ が存在する。$M \gt 0$ としてよい。また $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ と $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}b_n = \beta$ より、ある自然数 $N_1, N_2$ が存在して、

各 $n \geq N_1$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \dfrac{\varepsilon}{2}\dfrac{1}{M}$ (※)

各 $n \geq N_2$ に対し $\abs{b_n \minus \beta} \lt \dfrac{\varepsilon}{2}\dfrac{1}{\abs{\alpha} + 1}$ (※)

である。よって $n \geq \max\cbr{N_1, N_2}$ ならば \begin{align} \abs{a_n b_n \minus \alpha \beta} &\lt \dfrac{\varepsilon}{2}\dfrac{M}{M} + \dfrac{\varepsilon}{2}\dfrac{\abs{\alpha}}{\abs{\alpha} + 1} \\&\lt \dfrac{\varepsilon}{2} + \dfrac{\varepsilon}{2} \\&= \varepsilon \end{align} が成り立つ。

kureha
$\abs{b_n}$ っていう厄介者を定数 $M$ で押さえつけられて
ちょっと解答がすっきりしたね
mizuha
でもまだ (※) の小細工が
めんどくさいよね

【LEVEL 3】"$\lt \varepsilon$" にこだわらない

mizuha
これまで $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \alpha$ を示すときは
$\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$ を導出するのを目指してたけど……
mizuha
実は $\abs{a_n \minus \alpha} \lt 2\varepsilon$ を導出するだけで十分だったりする
mizuha
というか正定数 $c$ に対して
$\abs{a_n \minus \alpha} \lt c\varepsilon$ を導出すれば十分
kureha
詳しく
mizuha
ある正定数 $c$ に対して 任意の $\varepsilon \gt 0$ に対し $$\exists N \in\NN, \forall n \geq N, \abs{a_n \minus \alpha} \lt c\varepsilon$$ となることが導けたとする……
mizuha
このとき改めて $\varepsilon’ \gt 0$ を任意に取って $\varepsilon = \dfrac{\varepsilon’}{c}$ とすると $$\exists N \in\NN, \forall n \geq N, \abs{a_n \minus \alpha} \lt c\varepsilon = \varepsilon’$$ が得られるから $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \alpha$ を示せたことになる
kureha
なるほど
mizuha
更に……実は
$\abs{a_n \minus \alpha} \lt c\varepsilon$ を示す代わりに
$\abs{a_n \minus \alpha} \leq c\varepsilon$ でもいい
mizuha
ある正定数 $c$ があって、任意の $\varepsilon \gt 0$ に対し

$\exists N \in\NN, \forall n \geq N, \abs{a_n \minus \alpha} \leq c\varepsilon$

が導出できたとする……
mizuha
このとき改めて $\varepsilon’ \gt 0$ を任意に取って $\varepsilon = \dfrac{\varepsilon’}{2c}$ とすると $$\exists N \in\NN, \forall n \geq N, \abs{a_n \minus \alpha} \leq c\varepsilon \lt \varepsilon’$$ が得られるから $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \alpha$ を示せたことになる
kureha
なるほど
mizuha
更に……実は $c \gt 0$ じゃなくて $c \geq 0$ でもいい
kureha
$0$ になる可能性があってもいいって事?
mizuha
ある非負定数 $c$ があって、任意の $\varepsilon \gt 0$ に対し

$\exists N \in\NN, \forall n \geq N, \abs{a_n \minus \alpha}\leq c\varepsilon$

が導出できたとする……
mizuha
もし $c = 0$ なら 任意の $\varepsilon’ \gt 0$ に対し

$\exists N \in\NN, \forall n \geq N, \abs{a_n \minus \alpha} = 0 \lt \varepsilon’$

でオッケーだし
$c \gt 0$ ならさっきと同じ方法でいい
kureha
なるほど
mizuha
つまり
補題

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ と実数 $\alpha$ に対し、以下は同値。

(I)

任意の正実数 $\varepsilon$ に対し、ある自然数 $N$ が存在して、

$n \geq N$ なる各自然数 $n$ に対し、$\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$

(II)

ある非負実数 $c$ が存在し、

任意の正実数 $\varepsilon$ に対し、ある自然数 $N$ が存在して、

$n \geq N$ なる各自然数 $n$ に対し、$\abs{a_n \minus \alpha} \leq c\varepsilon$

証明

(I) ${}\implies{}$ (II)

$c = 1$ とすればよい。

(I) ${}\impliedby{}$ (II)

$c = 0$ のときは自明。$c \gt 0$ とする。$\varepsilon \gt 0$ を任意に取ると (II) よりある自然数 $N$ が存在して

各 $n \geq N$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \leq c \cdot \dfrac{\varepsilon}{2c} = \dfrac{\varepsilon}{2} \lt \varepsilon$

となる。

mizuha
これを使うと問題6の証明で小細工しなくていい
問題6(再掲)

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}, \cbr{b_n}_{n \in \NN}$ と実数 $\alpha, \beta$ に対し、 $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ かつ $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}b_n = \beta$ ならば $$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n b_n = \alpha \beta$$ が成り立つことを示せ。

解答例3($\varepsilon$ の定数倍以下を示す)

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。各自然数 $n$ に対し \begin{align} \abs{a_n b_n \minus \alpha \beta} &= \abs{(a_n \minus \alpha)b_n + \alpha b_n \minus \alpha \beta} \\&= \abs{(a_n \minus \alpha)b_n + \alpha(b_n \minus \beta)} \\&\leq \abs{a_n \minus \alpha}\abs{b_n} + \abs{\alpha}\abs{b_n \minus \beta} \end{align} であることに注意。収束列は有界なので、$\abs{b_n} \leq M$ なる定数 $M$ が存在する。また $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ と $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}b_n = \beta$ より、ある自然数 $N_1, N_2$ が存在して、

各 $n \geq N_1$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$

各 $n \geq N_2$ に対し $\abs{b_n \minus \beta} \lt \varepsilon$

である。よって $n \geq \max\cbr{N_1, N_2}$ ならば \begin{align} \abs{a_n b_n \minus \alpha \beta} &\lt \varepsilon M + \abs{\alpha} \varepsilon = (M + \abs{\alpha})\varepsilon \end{align} が成り立つ。

kureha
あまり頭使わずに まっすぐ証明が書けるようになるね
mizuha
まあどこまで解答を省略して書いていいかは
適当に空気読んでね

mizuha
他にもいろんなテクニックがあるけど
数をこなせば自然に身に付くから
とにかくガンガン問題解こう
問題8

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ と実数 $\alpha, c$ に対し、$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ ならば $$\ds\lim_{n \rightarrow \infty} c a_n = c \alpha$$ であることを示せ。

解答例

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ より、ある自然数 $N$ が存在して、

各 $n \geq N$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$

となる。このとき各 $n \geq N$ に対し $\abs{c a_n \minus c \alpha} = \abs{c}\abs{a_n \minus \alpha} \lt \abs{c}\varepsilon$ となる。

問題9

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ と実数 $\alpha$ に対し $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ であるとする。以下を示せ。

(1)

$\beta \lt \alpha$ ならば、$\beta \lt \gamma \lt \alpha$ なる実数 $\gamma$ と自然数 $N$ で

各 $n \geq N$ に対し $\gamma \lt a_n$

となるものが存在する。

(2)

$\alpha \lt \beta$ ならば、$\alpha \lt \gamma \lt \beta$ なる実数 $\gamma$ と自然数 $N$ で

各 $n \geq N$ に対し $a_n \lt \gamma$

となるものが存在する。

(3)

$\alpha \neq \beta$ ならば、$0 \lt C \lt \abs{\alpha \minus \beta}$ なる実数 $C$ と自然数 $N$ で

各 $n \geq N$ に対し $\abs{a_n – \beta} \gt C$

となるものが存在する。

解答例

(1)

$\alpha \gt \beta$ と $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ より、ある自然数 $N$ が存在して

各 $n \geq N$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \dfrac{\alpha \minus \beta}{2}$

であり、特にこのとき $\minus\dfrac{\alpha \minus \beta}{2} \lt a_n \minus \alpha$ なので

各 $n \geq N$ に対し $a_n \gt \dfrac{\alpha + \beta}{2}$

であり、$\beta \lt \dfrac{\alpha + \beta}{2} \lt \alpha$ である。

(2)

$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}(\minus a_n) = \minus \alpha$ と $\minus \alpha \gt \minus \beta$ と (1) より、$\minus \beta \lt \gamma \lt \minus \alpha$ なる実数 $\gamma$ および自然数 $N$ が存在して

各 $n \geq N$ に対し $\gamma \lt \minus a_n$

となる。よって各 $n \geq N$ に対し $a_n \lt \minus \gamma$ であり、また $\alpha \lt \minus \gamma \lt \beta$ である。

(3)

(1) が成り立つときは $C = \gamma \minus \beta$、(2) が成り立つときは $C = \beta \minus \gamma$ とすればよい。

問題10

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ と実数 $\alpha \neq 0$ に対し、$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ ならば $$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}\dfrac{1}{a_n} = \dfrac{1}{\alpha}$$ が成り立つことを示せ。

解答例

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。問題9より、ある正実数 $C$ と自然数 $N_1$ が存在して

各 $n \geq N_1$ に対し $\abs{a_n} \geq C$

となる。特に各 $n \geq N_1$ に対し $a_n \neq 0$ であることに注意。

また $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ より、ある自然数 $N_2$ が存在して

各 $n \geq N_2$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$

となる。よって $N = \max\cbr{N_1, N_2}$ とすると、各 $n \geq N$ に対し $$\abs{\dfrac{1}{a_n} \minus \dfrac{1}{\alpha}} = \dfrac{\abs{a_n \minus \alpha}}{\abs{a_n}\abs{\alpha}} \lt \dfrac{1}{C\abs{\alpha}}\varepsilon $$ である。

問題11(極限の単調性)

実数列 $\cbr{a_n}_{n\in \NN},\cbr{b_n}_{n\in \NN}$ と実数 $\alpha, \beta$ に対し、 $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \alpha$ かつ $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} b_n = \beta$ かつ

各自然数 $n$ に対し $a_n \leq b_n$ $\quad$(※)

ならば $\alpha \leq \beta$ であることを示せ。

解答例

$\varepsilon, \delta \gt 0$ を任意に取る。このとき $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \alpha$ と $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} b_n = \beta$ より、ある自然数 $N_1, N_2$ が存在して

各 $n \geq N_1$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$

各 $n \geq N_2$ に対し $\abs{b_n \minus \beta} \lt \delta$

となる。よって $N = \max\cbr{N_1, N_2}$ に対し

$\alpha \minus \varepsilon \lt a_N$ $\quad$ かつ $\quad$ $b_N \lt \beta + \delta$

となり、更に $a_N \leq b_N$ より $\alpha \minus \varepsilon \lt \beta + \delta$ となる。任意の $\varepsilon, \delta \gt 0$ に対しこれが成り立つので $$\ds\sup_{\varepsilon \gt 0} (\alpha \minus \varepsilon) \leq \inf_{\delta \gt 0}(\beta + \delta)$$ となり $\alpha \leq \beta$ を得る。

mizuha
ちなみに (※) の条件を弱めて
「無限個の $n$ に対して $a_n \leq b_n$」
ってしても ほとんど同じように証明できるね
kureha
$N \geq \max\cbr{N_1, N_2}$ かつ $a_N \leq b_N$ となる
$N$ が取れるからか
問題12(挟み撃ちの原理)

実数列 $\cbr{a_n}_{n\in \NN},\cbr{b_n}_{n\in \NN}, \cbr{c_n}_{n\in \NN}$ と実数 $\alpha$ に対し、 $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \ds\lim_{n \rightarrow \infty} c_n = \alpha$ かつ

各自然数 $n$ に対し $a_n \leq b_n \leq c_n$

ならば $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} b_n = \alpha$ であることを示せ。

解答例

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。このときある自然数 $N_1, N_2$ が存在して

各 $n \geq N_1$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$

各 $n \geq N_2$ に対し $\abs{c_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$

である。よって $n \geq \max \cbr{N_1, N_2}$ のとき $\alpha \minus \varepsilon \lt a_n$ かつ $c_n \lt \alpha + \varepsilon$ なので $$\alpha \minus \varepsilon \lt b_n \lt \alpha + \varepsilon$$ となり $\abs{b_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$を得る。

kureha
そろそろ二つ $N_1, N_2$ 取って $\max$ を取るの
だるくなってきたな……
mizuha
慣れてきたら
「ある自然数 $N$ が存在して 各 $n \geq N$ に対し
$\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$ かつ $\abs{c_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$」
って書いちゃってもいいかもね
問題13(チェザロ平均)

実数列 $\cbr{a_n}_{n\in \NN}$ と実数 $\alpha$ に対し、

$\ds\lim_{n \rightarrow \infty}a_n = \alpha$ $\quad$ ならば $\quad$ $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}\frac{a_0 + \cdots + a_{n\minus 1}}{n} = \alpha$

であることを示せ。

解答例

各自然数 $n$ に対し $$\frac{a_0 + \cdots + a_{n\minus 1}}{n} \minus \alpha = \frac{(a_0 \minus \alpha) + \cdots + (a_{n\minus 1} \minus \alpha)}{n}$$ なので、$\alpha = 0$ のときに示せば十分。

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。$\ds\lim_{n\rightarrow \infty}a_n = 0$ なので、ある自然数 $N$ が存在して、

各 $n \geq N$ に対し $\abs{a_n} \lt \varepsilon$

である。$A_N = \max\cbr{\abs{a_1}, \ldots, \abs{a_{N \minus 1}}}$ とすると

$\qquad$ 各 $n \geq N$ に対し \begin{align} &\abs{\frac{a_0 + \cdots + a_{n\minus 1}}{n}} \\ &\qquad\leq \dfrac{\abs{a_0} + \cdots + \abs{a_{N\minus 1}} + \abs{a_{N}} + \cdots + \abs{a_{n\minus 1}} }{n} \\ &\qquad\leq \dfrac{N A_N}{n} + \dfrac{n-N}{n}{\varepsilon} \\ &\qquad\lt \dfrac{N A_N}{n} + \varepsilon \end{align} となる。$\dfrac{N A_N}{M} \lt \varepsilon$ なる自然数 $M$ を取ると

各 $n \geq M$ に対し $\dfrac{N A_N}{n} \lt \varepsilon$

となるので、各 $n \geq \max\cbr{N, M}$ に対し $\abs{\dfrac{a_0 + \cdots + a_{n\minus 1}}{n}} \lt 2 \varepsilon$ となる。

問題14

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ と実数 $\alpha$ に対し、

$\ds\lim_{n \rightarrow \infty} {a_n} = \alpha$ ならば $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} \abs{a_n} = \abs{\alpha}$

であることを示せ。

解答例

$\varepsilon \gt 0$ を任意に取る。$\ds\lim_{n \rightarrow \infty} {a_n} = \alpha$ より、ある自然数 $N$ が存在して

各 $n \geq N$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \varepsilon$

となり、$\abs{\abs{a_n} \minus \abs{\alpha}} \leq \abs{a_n \minus \alpha}$ なので

各 $n \geq N$ に対し $\abs{\abs{a_n} \minus \abs{\alpha}} \lt \varepsilon$

である。

問題15

実数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ と $\alpha \in (\minus 1, 1)$ に対し、

$\ds\lim_{n \rightarrow \infty} \dfrac{a_{n+1}}{a_n} = \alpha$ ならば $\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = 0$

であることを示せ。

解答例

問題9より、$\minus 1 \lt \gamma_1 \lt \alpha \lt \gamma_2 \lt 1$ なる実数 $\gamma_1, \gamma_2$ および自然数 $N_1, N_2$ が存在して、

各 $n \geq N_1$ に対し $\dfrac{a_{n+1}}{a_n} \gt \gamma_1$

各 $n \geq N_2$ に対し $\dfrac{a_{n+1}}{a_n} \lt \gamma_2$

であり、$N = \max\cbr{N_1, N_2}$ および $r = \max\cbr{\abs{\gamma_1}, \abs{\gamma_2}}$ とすると $r \in [0, 1)$ で

各 $n \geq N$ に対し $\minus r \leq \gamma_1 \lt \dfrac{a_{n+1}}{a_n} \lt \gamma_2 \leq r$

となる。よって各 $n \geq N$ に対し $\abs{a_{n+1}} \lt r \abs{a_n}$ なので

各 $n \geq N$ に対し $\minus r^{n \minus N}\abs{a_{N}} \lt \abs{a_n} \lt r^{n \minus N}\abs{a_{N}}$

となり、$n \rightarrow \infty$ として $\ds\lim_{n \rightarrow \infty}{a_n} = 0$ を得る。

問題16(収束整数列は有限個を除いて一定)

整数列 $\cbr{a_n}_{n \in \NN}$ が収束すれば、ある自然数 $N$ が存在して

$a_{N} = a_{N+1} = a_{N+2} = \cdots$

であることを示せ。

解答例

$\ds\lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \alpha$ とする。このときある自然数 $N$ が存在して

各 $n \geq N$ に対し $\abs{a_n \minus \alpha} \lt \dfrac{1}{2}$

すなわち各 $n \geq N$ に対し $\alpha \minus \dfrac{1}{2} \lt a_n \lt \alpha + \dfrac{1}{2}$ である。長さ $1$ の開区間に属する整数は高々一つなので(※)、$a_N, a_{N+1}, a_{N+2}, \ldots$ は全て同じ整数である。

mizuha
(※)
もし $x \lt m_1 \lt m_2 \lt x + 1$ だとしたら
$0 \lt m_2 \minus m_1 \lt (x + 1) \minus x = 1$ より
$0$ と $1$ の間に整数が存在することになって矛盾

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